【連詩、はじめました】Twitter連詩に参加してみたら、もしかしたら現代詩手帖に掲載されるかもしれません
宮尾節子さんによるTwitter上での連詩企画に、少しだけ参加させていただきました。
ツイッター連詩【詩のレシピ】pw連詩組&現代詩手帖共同企画 #pwGT組 完全版 - Togetterまとめ
9篇目に載っています。現代詩手帖との共同企画とのことなので、もしかしたら紙面に掲載されるかもしれません。
@sechanco 宮尾さん、それから各担当者の方々、pwGT組のみなさま、ほんとうにお疲れさまでした。10月末発売、「現代詩手帖」11月号の「共同詩」特集に掲載予定です。楽しみにお待ちください! ありがとうございました!
— 現代詩手帖 (@shitecho) 2014, 10月 5
10月末発売、「現代詩手帖」11月号をチェックせねば、です。手帳にメモしました。
【詩について】
魚の黒ずんだハラワタを割り箸の先でほじくってチロチロ舐めては、安い酒を呷る夜だ。 あの女の汚らわしい内蔵をぼくは刻んで焼いて、醤油をかけて食べた。骨は森の中に棄ててきた。 さようなら、ぼくの過去。 さようなら、ぼくの肉体。 (詩のレシピ4)#pwGT組
— 川澄萌野 (@acchonbrico) 2014, 9月 24
基本的にあんまり何にも考えずに勢いで書いています。一目でおわかりの通り、映画「冷たい熱帯魚」で印象的なワンシーンの影響があります。それから、「ぼく=あの女」なのではないかと考えると、女の汚らわしさを持つ自分に別れを告げ、主人公が脱皮している、ようです……どうやら。
【詩集はじめました】自殺予防のための合同詩集「生きぬくための詩68人集」に参加しています
実は、詩人「秋野りょう」名義での活動を開始しております。
コールサック社より9月10日に発売された、合同詩集「生きぬくための詩68人集」に寄稿・参加しています。
アンソロジー詩集『生きぬくための詩68人集―死を越えて生を促すために』|コールサック社|詩集、詩論集の自費出版・企画出版
上記リンクから立ち読み・購入できます。
……がしかし!! 現在、私の手元に残り14冊の在庫が現在ありまして、ぜひ、私から直接買ってくれるという方がいらしたら、本当にありがたいです。
続々各種SNSで買ってくださる方が出て感謝の日々です。届いた方からも、たいへんありがたいことにご好評いただいております。最後まで売り切りたい、と思っています。
メール便で発送いたしますので、送料も比較的お得にお買い求めいただけます。お支払いは銀行振込または現金書留でお願いしております。
今回は、特に本を「差し上げる」ことや、大幅に割り引くことは、ほとんどしていません。読んでいただく価値があるものを書こう…と思って原稿に向かいました。
ちなみに、Amazonからも買えます。Amazonが好きな方はこちらが便利かもしれません。
Amazon.co.jp: 生きぬくための詩68人集―死を越えて生を促すために: 味戸ケイコ: 本
一作目の「メメント・モリ、または、桜。または、舞台。」は、詩のブログに出してご好評いただいたものを若干手直ししてあります。だいたいがこの散文詩テイストで出しています。
メメント・モリ、または桜。または、舞台。 - 片隅でうたい続ける、わたしたちは。
ご購入ご希望の方は、moeno.k(at)gmail.comまで(※atを@に変えてください)メールいただければ幸いです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
ポーチでプロフィールを作ってもらった!!
じゃじゃーん!
「川澄萌野 (Moeno Kawasumi)」担当の記事 | Pouch[ポーチ]
……おお、なんかすごい!! ライターの人っぽい!
というわけで、今後とも気を引き締めてやってゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします〜!!
ポーチで書かせていただいた記事、反省しながらリンク集その1(9/27現在)
8月にポーチのライターになり、初めてwebの媒体で書けることになりました。ド新人で色々ご迷惑おかけしています。
今まで結構書いたので、ここでリンク集いったん作ります。なんとなく……古いほうから追っていったほうがいいのかなあ。……あ、いつでも、幅広くお仕事お待ちしています!! 結構何でもやります! ご連絡はmoeno.k(at)gmail.comまで。
【8月】
シャトレーゼ渾身の限定スイーツ「ぶどう餅」が宣伝文句以上のモッチモチ&ジューシーさでまさに天国のひとつぶ! | Pouch[ポーチ]
グルメ。初記事。どういうテンションで行けばいいかまだ全然掴めていなかった(今も、掴めてないときが多いので日々反省……)。あと、断面図撮るのが結構大変でした。個人的には、やはり冷蔵ナシで持ち運べるのが、何かとお持たせの多い夏にピッタリだと思いました。
【奏でる話】夏風邪とスマホと、いつもは送らないスタンプと。 〜ヨシミの場合 | Pouch[ポーチ]
ケータイ小説。提案いただいて書いてみたショートショートシリーズ。仮名、実体験ベースで組み立てて、ちょっといい話的に仕上げました。徐々に色々登場人物が増えたり、話の中でリンクするタイプです。後からよくよく考えたら友達にヨシミさんいました、ヨシミさん名前使ってすいません。
【9月】
打倒デング熱ッ! 代々木公園の蚊を駆除すべく勝手に出動してきたっ! | Pouch[ポーチ]
体張る系。これなー……色々あったけど、ノーコメント……。感想としては、「暑かった」「ゆるキャラの気持ちがわかった」「その後飲んだハイボールがおいしかった」「これからも体張りたいので体力つけよう」などです。
「GQ JAPAN」のイケメンコンテストがオシャレ男子ぞろい! 急いで投票に行かなくっちゃ! | Pouch[ポーチ]
イケメンを探せ。情報くれた方に感謝。「もしや、あんまり女子系でニュースになってないのでは?」とひらめき、投票する作業も楽しかったので「広めねばー!!」と思って。個人的には18番のライターの方がタイプです。
【奏でる話 Vol.2】ふたりのいえと、かき氷。 〜リカコの場合 | Pouch[ポーチ]
ケータイ小説第2弾。ある夫婦の家にお邪魔していて受けた印象を、諸々フィクション交えて書きました。リカコの年齢の設定を何歳にするか少し悩んだ。ジェンダーの問題もほんの少し仕込みたかった。写真はウチにある柔軟剤です、一番右側がお気に入りです。
中野ブロードウェイの激安洋品店「らこっと」ではすべての服が575円!! 激安アイテムオンリーでモテコーデ考えました | Pouch[ポーチ]
体張る系&ファッション。大好きなブロードウェイでお買い物。この日は一応、ピンクのアイシャドウとピンクチークでふんわり顔っぽく軽くメイクし、撮っていただきました。モデルの着回しポーズが難しかったです。これは要練習。モテコーデなのかは……私が着たいの勝手に買ってきちゃっただけなのでモテるのかどうかよくわかりませんが、これで買った服、普通に着てます。もう少しトレンドも勉強しつつ、秋バージョンもやっていければと思っています。あー、太りたくねえ!!
【ゆるい】ゆるキャラグランプリ2014開幕! 記者が勝手に決めた「ゆるすぎる大穴ベスト10」!! | Pouch[ポーチ]
ゆるキャラ好きなんですよ。「日の当たってないゆるキャラってどういうのだろう?」と調べてみたら、結構カオスな世界で面白かったです。「なめじろう」のやる気ない感じは個人的に激アツだったので、私の勝手なランキングで本人にも(本体にも?)喜んでいただけてよかったです。きのこ食べようぜ。
【奏でる話vol.3】みずみずしく暮らす。 〜アリサの場合 | Pouch[ポーチ]
ケータイ小説。このへんからだんだん話があっちこっちに……方向性もう一度立て直しつつ、読みたい方がもしいたらまた、書かせていただくかもしれません。自分の周りの面白そうな人たちや架空の人たちを引っ張ってきて喋らせるんですが、まあ全部だいたい自分の分身なところもあるんですよね。この企画で自分が目指してるのは結局、「山本文緒テイストの短編小説の、あの『女の生活あるある』ってなって、めっちゃ泣ける感じ」をギュッとスマホサイズに凝縮できたらいいな、という……あの泣ける感じは凄いと思うんです。なかなかそううまく一流小説家のようには書けないけど、修行しかない。
アイスバケツチャレンジのコスプレ衣装が出たーッ! これで超簡単にチャレンジ可能になるかも!? | Pouch[ポーチ]
海外ネタ。これは翻訳ほぼやってないけど。ネタがセンシティブなのでこれまた難しいですが、ブッコんだ最後の段落が言いたいことです(私の文はひどく長いのでしばしば削られることが多いんですが、こういうの残してくれるの好き)。
筋肉フェチ女子に朗報! 見よ、体操ニッポン男子代表選手たちの究極の肉体美をっ!! | Pouch[ポーチ]
筋肉男子ね。これ結構ウケたんだなー。これはホント、フジテレビのPRの素晴らしさに尽きると思います。もっと見たい方は、LINEでお友達登録がオススメです。
音楽の授業で見たかった! チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のCMがブッ飛んでる〜ッ!! | Pouch[ポーチ]
クラシック音楽動画ネタ。伸びましたー、今みたらfacebookいいね!3,922件でした。動画自体の52,908回も62,578回に。実は地味〜に音楽の修士とったりしてる自分だから書けることかなと思うので(作曲家の名前が表記問題で意見割れるので若干学術的知識は要るかなあ、と……)、これ系で良いモノを紹介することは今後もやっていきたいと思います。ネタと情報いただいた先輩に感謝。動画自体が素晴らしいんですよね、演奏も発想も。ちょうど、公開翌日がドヴォジャークの誕生日でした(まったく狙っていなかったのでビビりました)。ちなみに、この曲、色々トラックリスト見てみたんですけど、もっと速い演奏も存在するようです。タンバリン大変だろなー。
誰でもカンタンに話題の「3Dプリント」ができちゃうお店「東京メイカー」!! 気になったので店番してみたよ | Pouch[ポーチ]
オーラスで中野ブロードウェイ地下で店番させていただきました。面白かったです。メディアに取り上げられる際の「3Dプリンター」の最近アレな感じを、払拭したい、という気持ちが強かった。これからめっちゃ可能性がある分野だと思います。このお店の場合、CADできなくても「これ作って!」で作ってくれるのはかなり需要あるみたいです。3Dプリンターを言葉で説明するの至難の業……もっと修行します。
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【このへんから一時的に出社してたくさん書いてる一週間】
【雑貨】超! リアルな芝生 “midori” にいろんなモノを置いて、お部屋に公園作っちゃおー!! | Pouch[ポーチ]
超ちっちゃいフィギュアとか(フチ子さんとか……シルバニアファミリーとか……)置きたかったんですが、すぐ入手できなそうだったので、「これはきのこの山しかない!!」と……。写したものは、ほぼ私物です。ツッコミどころが多いので併せてお楽しみください。
たったの千円でジェルネイルをしてくれちゃうなんて破格!「ネルパラ」のカウンターが文字通りパラダイスだった! | Pouch[ポーチ]
これも中野ブロードウェイ地下が好きすぎて書きたかった。最近よくお世話になっているお店です。公開後即、ネルパラ代表の方からTwitterでご連絡いただき、とても嬉しかったです。540円でジェルでない従来のマニキュアを塗ってくれるサービスもあって、こちらも落としやすいのでオススメ。基本は単色なんですが、2色選べるので、例えば指1本だけ違う色にする……とかできます。最後の写真は「どうやって撮ったんだ!?」と言われそうで全然言われてないですが、シャッターを押したのは弟でした。
【孤独のLINE】パン田一郎の自動返信で孤独は癒されるのか!? 夜中にストイックに試しました | Pouch[ポーチ]
パン田一郎、好きなんですよ。かわいいから。その後、パン田には何一つ送ってません。色々オチで迷ったんですよ、で、私の選択したオチ「ヒロシです……」で終わりなんかい!! っていう。ここで、諸先輩方との実力の差を感じました。この日は、ひたすら色んなギャグをパン田に向かって壁打ちしながら、「あーお笑いライブに行きたいなー、そろそろネタ切れだなー」って思っていました。
【ハロウィン限定】クリスピー・クリーム・ドーナツの限定デザイン、一足お先にぜーんぶ、怒濤の箱食いレポッ!! | Pouch[ポーチ]
グルメ。かわいいのでテンション上がる。全種類いただきました。甘かったです。うーん……甘いのあんまり食べない自分が選ぶなら……モンブランのドーナツかなあ、ふんわりしてておいしかった。
人生を考え直しちゃうレベル!! ちょいとワイルドな世界を表現した「大人のシルバニア」がハイクオリティすぎる | Pouch[ポーチ]
これを思いつけたの、芝生のおかげだと思います。作者さんのことTwitterでずっとフォローしていて、いやー、いつも面白いなーと思っていたので。喜んでいただけてとても嬉しかったです!! これからも楽しみにしてます。
【今日は何の日?】9月10日は世界自殺予防デー、日本でも自殺予防の取り組み広まる | Pouch[ポーチ]
生きてると色々あるので、どうしても書きたくて書かせていただいてしまった。ちなみに、映画では友人の自死を描いた「わたしたちに許された特別な時間の終わり」がポレポレ東中野で10/10まで公開中、Twitter見てるととても好評なので見に行かねば、と思っています。また、(あまり表立ってはPRされていないが)自死した作家・佐藤泰志原作の「そこのみにて光輝く」もアンコール上映中、これは史上最強に素晴らしいのでスクリーンでぜひ見ていただきたい。自分はもう2回見ました、綾野剛エロい。
【心霊?】親友の葬儀にダサいドレス姿で出席した兵士の画像に意外な声/心霊写真じゃないか? | Pouch[ポーチ]
まさかの画伯デビュー。微妙な表情が絶妙に似ませんでしたね……。「5分スケッチ」を提唱している友人のおかげで、描けちゃうかなーと思ったんだけど。しかしこれ、練習してないと下手になるんだよね、スケッチ。世界情勢についてはノーコメント……英語やらなきゃなーと思った日でした。
【デング熱】「のじれん」が、蚊取り線香や虫除けスプレーなど、野宿者への物資支援を募集中! | Pouch[ポーチ]
広めたかったんですね、ホントに。心から。頭が上がりません。私に今できることは広めることだけなので。
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【このへんから、再び家で書いてる、たぶん】
【飯テロ】中野でひっそりと行われた深夜食堂ナイト! マスター渾身のごはんをみんなで食べる贅沢な時間!! | Pouch[ポーチ]
Twitterをずっと拝見していて、行ってみたかったんですね。ドラマ第3弾や映画も楽しみですし。ホントに楽しく、おいしい時間でした。取材じゃなかったらデロデロに酔ってました、多分。取材でも若干フワフワしてました。お店の皆様にモーレツに感謝です。文体は、一応漫画と睨めっこしながら書きました。
【発売前レビュー】卵を割ったらプリンが出てくる!? 話題のオモチャ「おかしなたまご まわしてまわしてまるごとプリン」を使ってみたなり | Pouch[ポーチ]
これは、作るのめっちゃ楽しかったですね!! 30代になって、女子ふたりでプリン作ると思ってませんでした。テンション上がりました。
【恋の予感】ダイアログ・イン・ザ・ダークの「秋の真っ暗大運動会」に出場してきた!! まっくらやみの中で生まれたトキメキは無限大ッ! | Pouch[ポーチ]
なかなかこういうことがないと、自分から積極的に行かなかったイベント。友達もできて楽しく、また非常に貴重な体験でした。恋は生まれませんでした……。(※まあ想像に任せるけど、視覚をシャットダウンする体験すると、色々すごく良いことがあります……あ、この場所でなくて、帰った後とかに気づくことが多いです。あ、それはゲスい話も含めてなんだけど、音楽やる人とかも行ったらなんか答えがある場所なのでは、と思いました。)
あなたのイラストがそのまんまお洋服に大へんし〜ん! 新サービス『STARted』がファッション革命すぎるッ!! | Pouch[ポーチ]
これ、作りたいんですよね〜。3万円プランの公開に期待大です。ものすごいですよね。(だんだん、眠くなってキャプションが雑になってきた……)
切なくて、涙が止まらない…セウォル号の犠牲者、キム・シヨンさんの遺した歌がピュアすぎる | Pouch[ポーチ]
編集長と共著。この事件についてはホントに哀しみを感じます。
……以上、ヒー、長かった……。寝ます。これからも、楽しい企画たくさん考えるので、みなさまどうぞよろしくお願いいたします!!
小さな小さなバーの、半透明のカーテンを開けて、
演奏家を名乗っていた時代のことだ。知らない街でオーケストラのオーディションがあるというので、ビジネスホテルを適当に探して、前日から泊まったことがある。新幹線で初めて降りた見知らぬ街。エレベーターの列や、駅員のイントネーションの違い。ビビッドな広告たち。その日は確かiPhoneを初めて買った日だった。わけもわからず道に迷いながらも、どうにかホテルにチェックインしてから、ふらりと外に出かけたのだった。
古ぼけたガラス扉を開けてうどん屋に入り、名物らしいうどんをすすった。疲れていたので、温かいだしがとてもおいしかった。お酒が飲みたかったので、周りの路地裏を歩いてみると、焼鳥屋や風俗店が立ち並ぶ狭い狭い通りの隅っこのほうに、そのバーは小さな看板を出していた。
確かまだ寒い時期のことだったので、立ち飲みバーはビニールのカーテンで囲われていた。中を覗くと、ニカッと笑うマスターと目が合った。カクテルと、つまみを何点か。この世で一番おいしいカクテルに思えた。
初めて来たんです、明日オーディションなんです、と話すと励ましてもらえて。終わった後また駆けつけると、方向音痴な私に名所を案内するために、一度シャッターを下ろして自転車を出してくれたような気がする。ガイドブックの地図も私の代わりに読んでくれた。あのとき、見知らぬ街でどれだけ弱い心が救われたことか、わからない。
次の季節が来て、またオーディションを受けに行ったとき、マスターは「またアカンかったんかあ。今度は受かる思てシャンパン用意して待っとったのになあ。ホンマやで。」と、残念そうに、明るく笑ってくれた。ふがいなくて、それでも仕方ないな、と思った。その年、私は楽器をやめることにした。
色々な人が集まるカウンター。仕事の話をしたり、その街の流行の話で盛り上がったり。何よりも、心のこもった食べ物が美味しく、東京に帰ってきてからも忘れることができない。
路地裏では様々な出会いがあって、昼間には出会わないはずのさまざまな人生が交差していく。たとえ赤の他人であっても、人は、人に心からの親しみを持って、やさしくできるのだと、教えてもらった土地だ。いま、あのバーのビニールを開けた、手ざわりを思い出している。
暑い夏だから、外の階段で涼もう。
散らかったアパートの中はまるでサウナのようだから、私は玄関に掛けてある杖を持って外に出る。古い木造アパートには昔お豆腐屋さんが入ってくれていたが、ご主人が体を壊してやめてしまった。それから、私の持っているアパートの軒先のシャッターは、錆びついてひらくことはない。きっと、私が死ぬまで。
白髪がだいぶ薄くなってしまった。汗が垂れてくるものだからカチューシャをしている頭が、風にさわさわと揺らされている。少し、涼しい。空の色は橙色へと変わってきている。
アパートの二階へ上がる階段に、私はいつものように腰を下ろして、涼みながら商店街の音を聴く。すぐ近くで電車が走っている。若い頃夢を与えてくれた、黄色い西武線は今も走っている。毎朝あれに乗って働きに出かけていた夫は、半世紀も前に死んでしまったから、近頃は顔も思い出せない。けれども、寝苦しい夜に、どこかで面影を見つけた気がして、少しだけ必死になって白い天井に手を伸ばしてみる。夫はもう私の夢にしかいない、記憶にしか存在しない。それでも、存在していてくれるなら。
私の記憶もなくなっていくのだろうか。昨日の食事は何を食べたんだろうか。「お年寄りは水を飲んでくださいね」と、役所の人は言う。親切で言ってくれているのだから、皺だらけの手で欠けた湯のみを掴んでお茶を飲む。「お年寄りは気をつけないと長生きできないでしょ」と、役所の人は言う。「私はね、もうすぐ終わりだから」と私は言うことにしている。「こんなに長く生きてるのをお兄さん、あなたに説明するのが面倒なのよ」、なんて言えないから。
階段の下に、野球帽をかぶった少女が通りかかった。体に合わない大きなリュックを背負って、広げた地図を見ながら小さな口でペットボトルから水を飲んでいる。彼女も暑いのだろう。夏はすべての人に平等だ。
「どうしたの?道に迷ったの?」
と、私は尋ねた。
「ちょっとね。お母さんのおつかい!」
少女は笑った。
「おばあちゃん、暑いね。なんでそんなところに座っているの?」
「部屋の中にいると暑いからねえ、こうやって外に出て風に当たっているの。涼しいでしょう。」
私は少女を見下ろした。少女は、まだ水をごくごくと飲んでいる。私と彼女の生命を蝋燭で表すような神殿がもしもどこかにあるならば、少女はまだまだ燃え出したばかりで、私はもうすぐ芯が焦げつく頃だろう。
「私ねえ、もう88歳なの。主人もね、50年前に死んじゃったのよ。亀戸から出てきたんだけど、それからずっと練馬。」
忘れもしない、あの空襲の後に実家を目にしたとき。妹は、真っ黒な顔で泣き喚いた。私は、長女だから、しっかりしているから、泣くなんてことはできなかった。二人姉妹なんだもの、ちゃんとしなくちゃいけなかった。
ああそうか、暑かったんだ、あの日も、暑かったんだ。あの地獄のような炎で、私たちは焼かれたんだ。自転車や、ガラス瓶がグニャリグニャリと融けて。逃げても逃げても炎が追ってきたんだ。
早朝、何もない、焼け野原。あったはずの私たちの家。それなりに小さな工場を営んでいた。みんなみんな、殺され、破壊されてしまった。私は、18だった。もう、大人だった。涙なんて出るもんか。出してやるもんか。唇をかたくむすんで、私は妹の背中をとんとん叩いた。
「練馬に出てきてねえ、いいわよ、ここは。駅も近いしね、商店街も便利でしょ。私はもう杖だからねえ、あんまり歩けないけど。でも、ここで涼んでいるの。」
「ちょっと涼しくなってきたもんね。」
「うちはねえ、妹がいたんだけど、妹のほうがしっかりしてなかったでしょ?だからねえ、実家に置いてきちゃったの。家業もあるしね。私が、先に出てきちゃったのよ、練馬に。結婚したしねえ。」
「へえ。妹さんも元気なの?」
「うん、元気。たまに亀戸まで行って会うわよ。でも、もう、足が悪くてねえ。」
妹も皺だらけになった。あの後建て直して、そして古びた実家で、妹はお茶菓子を出してきてくれた。若い頃私たちがおやつに食べていたものなんて、とても酷いものだったのに。そっと天井を見る。もうここにはあれは落ちてくることなんてないだろう。妹がテレビを点けると、地球のどこか遠いところで戦争が起こっていた。子供たちがたくさん死んだ、とアナウンサーが淡々と話した。あのとき焼け死んでいった幼なじみたち。どこか遠くの国へ出かけたっきり、帰ってこなかった男たち。私と妹は、それを知っている。知っているけれども、言葉にはしない。あの焼き尽くした炎を、悲鳴を、焼ける死体の臭いを、爆弾が落ちてくる中あてもなく逃げ惑った群衆の姿を。ああ、もう、できれば忘れたいのだ。妹はそっと、テレビを消した。
「あなたはまだ若いんだから、がんばって生きなさいよ。私、なんでも一人でやってきたの。このアパートのことも、何でもね。主人が早く死んじゃったものだから。私は、もうじきお迎えが来ると思ってるけどね。」
私は少しだけ、愉快に笑った。
「そんな、まだまだじゃない、おばあちゃん。ちゃんと水飲んでよね!暑いんだから!」
少女も役所の人みたいなことを言う。まだ水を飲んでいる。
「じゃあね!私、お使いがあるから!バイバーイ!」
リュックを背負い直して駆け出して行った。私は無言で手を振って見送る。
もう少し、何か喋りたかったんだけどな。この階段でいつも夕涼みしていても、誰もあまり来ないから。少しだけ、誰かと喋りたかったのかもしれない。
私は、孤独なのだろうか。皺だらけの顔で、醜くなってしまった体で、私は何を未だに求めているのだろう。脳味噌すら、融けかかっている。考えると、ずっとずっと落ち込んでしまうから。落ち込まないように、生きてきたんだから。自分はなんだってやってきたんだ。しっかりしているから、お姉ちゃんなんだから。
明日も階段に出よう、と自分に言い聞かせて、玄関へゆっくりと戻る。海から重力のかかる陸上に打ち上げられた両生類みたいな動き方で、のそのそと這う以外に、もう私には生きるすべがないのだ。ポストに入っていた夕刊には、新たに爆撃された飛行機の写真が大きく出ていた。どれだけ恐ろしかったことだろうか。少しかたくなってきたご飯を米びつから出して、主人の仏壇に供える。古い写真に手を合わせて考える。私はいつ死ねるだろうか。主人と一緒にまたあちらで暮らせるだろうか。私がいなくなった後の世界は、平和になるのだろうか。あの少女が、空から延々と降り続ける爆弾におびえることがあるのだろうか。明るい笑顔が、ゆがんでしまうことが起こるのだろうか。唇をかたくむすぶと、あの日の暑い、とても暑い空気が部屋の中に入ってきて、すべて焼き尽くされるような気がした。
明日も外で涼もう。暑い夏だから。とりあえず、この夏、私は生き長らえているのだから。
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(練馬駅周辺でフリーペーパー配布をしていたらこんなおばあちゃんから話を聞けたので、想像しつつ時間軸をある程度振り返りつつ、8月なので平和への思いを書いてみました。ほぼフィクションなので詩のブログのほうに書けばよかったのですが、まあ、いろいろな文体と視点と主語の実験をしていたくて。あ、一言も触れなかったけど、ひとりぐらしのおばあちゃん、地震のとき大丈夫だったのだろうか。こういうの読んでくれる人多かったらもう少し書きます。読書量が現在圧倒的に足らないのでうまく文学的にならない……がんばりたい。あああ、また文字の大きさ変な感じになった。はてなブログの仕様にうまく慣れることができない。あと、いかに三点リーダーを使わないかみたいなのももうちょっと練習が必要かなと思ってます)
「ピルチェン」した昨日の話。赤裸々に、低用量ピル個人輸入記。
facebookに、友達限定で書いたものなのですが、もしかして需要あるのではないかと思い、ブログに書きます。非常に口語調で読みづらさはあるかもしれませんが、割と流れるように喋るように書いてはいます。一応加筆・添削します。
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特に男性向けの話ではないんだけど、なんかこれ書く必要あるなと思って書く。
低用量ピル、個人輸入して飲んでいるんだけど(PMS及び生理痛の軽減目的、主治医には報告済み)、なんとなく一番メジャーなトリキュラー買って飲んで半年は経つ気がするが毎月毎月、一週間は生理痛で寝込んでて…。本当は、ピル飲むとまず「月経」自体起こらなくなるものなので(それっぽい出血はもちろんある)、いやーこの苦しみはヤバいなーと。
先日ある女友達に相談したら、「それ!ピル変えなよ!」と言われ、まあお世話になってる保健師さんにも色々言われ…今、自分が使ってる個人輸入サイトからヤーズというピルの発注かけたところです(※医薬品の個人輸入は、完全に自己責任です。他にも色々な薬剤が売られていますが、個人輸入サイトの選び方、服用の仕方、それを医師に相談する…まで含めて完全に自己責任で行ってください。私は一切責任を持てません)。
ヤーズは、確か若干信頼できる婦人科から処方されたこともあるので、まあ半年分ドバッと買ってドバッと。「月経期間短縮」って強調されてるのこれだけみたいなので。ヤーズ、ヤスミンは副作用の血栓症の記事がググると出てくるので、それだけ要注意。なんとか主治医に申告して血液検査をしてもらうようにして。ヤバかったらすぐ婦人科に行くと。
私がピル飲むのは、ほんとに生理痛が辛い、それだけです。効くピル効かないピル色々あるけど。18歳ぐらいからずっとピルサイト見て飲んでたり飲んでなかったりするけど、飲まないとまあほんとに辛くて生きていけない。
で、婦人科に通うデメリット、まずは単価が高い。低用量ピルは保険きかないから。1ヶ月2000円プラス診療代って感じ(それと、個人輸入しちゃったら割と最新鋭のピルなのに半年で8000円弱、この値段をぜひ比べていただきたい…)。実は不要なシーンでの内診などもある(ほんとはまあ、大体すべきではあるけど)。あと婦人科でわかってる先生って、まあハキハキ物を言うバリキャリウーマンな感じの方が多くて、実はちょっと怖い。
さらに言及すると、婦人科のわかってない医者はほんとにわかってない。富山在住時代、評判の良いおじいちゃん先生に子宮内膜症と決めつけられて、保険おりるからって中用量ピル処方され続けた日々とか、経験あります。中用量ピルって、避妊に失敗したあと急いで飲むモーニングアフターピル並みに強いものなのに、なんでそれを処方するのかわけがわからない。東京に戻ってきてから「あー子宮、元気元気!」と言われてやっと呪縛から解き放たれた。当時の恋人は「子宮内膜症?ハァ何それ性病?」みたいなこと言ってたのでほんとに酷いと今でも思ってる、それはまあいいや、そんなこと言っちゃう感覚の持ち主とは別れてよかったというお話です。
この3月にあまりに体調が酷く、当時の職場に「生理痛が辛いので休みます!」と電話したところ、他の女性社員から「私は生理で辛いって言わないようにしています」などと反響があった。しかし労働基準法に「生理休暇」は明記されているもので、言いづらくても、例えば他の生理痛がそこまで辛くないタイプの女性からやっかまれても、そこは女性の権利なので明確に主張したい、という気持ちが私にはありました。そのときはまさかここまで覚醒していませんでしたが。他者に寛容な社会のために権利を行使することで日々前進できるのではないか、とも思います。
その日の夕方、やっと動けるようになったので、口コミなどを見て新宿に診てもらいに出かけた。ほんとうにサボりではなくて動けなかったのだけれど、一応申し訳なさがあるので、休みとったぶんちゃんと病院行かなきゃ、と思って。そこでまた内診があって、子宮は元気と言われた。ピルの個人輸入には非常に白い目を向けられた。ここの新宿のおじいちゃん先生もわかっていなかった。「精神科の薬とピルは飲む時間をずらさないとダメだよお」と言っていて、そこでは「へー、そーなんですかー!知らなかったー!すごーい!」とか適当にやっといたが、実は精神科の薬でも三環系の薬(はい三環系の薬あるある言いたいよ~♪なんか名前にトリとかついていがち~♪)に限って、併用するとピルの避妊効果を低める、とかだったはず。私飲んでるのそれじゃないんでね…って精神科の主治医に言ったら、手をポン!と叩いて「それは川澄さんが完全に正しい!」と言っておられた。さすが私の主治医である。
…そんなふうなので、なかなか婦人科に行って「ハーイ!ピル個人輸入して飲んでまーす!」と言うのもしんどい時代なのである、未だに。私も個人輸入は去年からで、さすがにハードル高かったけど、まあほんとにこれ自己責任だし、えーとほんとに医療関係勤務とかだったら一応facebookとはいえ公言はできないけど今私は自由にものが言える立場ではあるので。実際、ここはAmazonかよ!って感じで買えます。個人輸入業者サイト比較は2chぐらいしか使えないけど、まあいったん登録するといちいち住所入れなくていいし、価格比較してそんなに割高じゃないから業者は浮気していないなー。
ちなみにどうやって私がセックスの際に避妊をしているかはここで述べるべきことではないので割愛。割愛するけど一応…コンドームは付けるべきだと思っている、色々防げないからね、特にHIV。そしてさらに一応尖って書くと、コンドーム、ローションないとマジで痛いときあるので、結局それも安いコンドームだと辛い。少々ギャルっぽい蝶柄パッケージのバタフライみたいな、「女性が開発しました!」みたいなやつが一番悪くない印象。そこも快適なセックスのためにコストかけるとまあまあ割とかかるもんだな、と男性には知っていていただきたい。あとはステディな相手がいるかいないか、これは別に私がどっちであっても、私の生き方なので誰にも非難される覚えはないことであるが、一般論としては固定した相手のほうが色々リスクは少ないのは確か。
で、「ピル飲んでる女ならヤらせてくれんだろ!」みたいなよくある男の意見も、ガン無視。でもね、意外と男友達に話すと、「彼女が生理痛酷くて助けてあげたい、え、ピルってそんなに高いんだ!」みたいな感じで興味ある層もいることに気づいたので、あえて書いてます。
特に今は、鬱状態や気圧と絡んで頭痛や歯痛が酷かったりするので生理痛も増幅する、それがしんどいのだった。
それから女性音楽家にとっての月経というのは、アスリートと並んで考えねばならないものだと昔から思っている。旅も多いので、ピルを自由に飲んで月経期間をずらせればこれだけ頼もしいことはない。また、重要なコンクールに生理が重なるのはほんとうにつらい。管楽器もまあまあつらいけど(リアルな話すると、まあトイレで踏ん張る的な筋肉を使うので、ほんと全力でがんばって吹くとヌメって血の塊出てくる感触があったりしてほんとにつらい、貧血にもなるし…これ、みんな実はあるあるだと思うのね…)、声楽は体が楽器なのでモロに影響出るよな、とか思う。
そんなわけで、私がピルについて語りはじめると長くなってしまうのだった。私は低用量ピルが日本でずっとずっと認可おりない頃、バイアグラ認可に合わせてようやく認可された経緯、いちフェミニストとして忘れたくない。薬の裏側には色々あるのだった。
もちろん、ピルにはどんなライトなピルでも副作用がある。これを読んでピルデビューしたい!と思った人は相談には乗れるけど、基本的に自分でネット検索して勉強していただきたいし(「ピルとのつきあい方」が老舗サイトなのでぜひご検索ください)、それから、一枚目のピルはとりあえず婦人科(わかってるっぽい婦人科、評判の良い婦人科)で処方してもらうことを、個人的にはオススメしている。
女の「産まない権利」がもっと認められる多様な社会の実現を心より願いながら、若干グレーな手段をとらなければならないのはかなしむべきことかもしれない。ほんと、見るとなんでも売ってたりするので、抗鬱剤や睡眠導入剤…それらを買うのは何よりも一番勧めないし、ドラッグを使ったレイプも許さない。また、安易な気持ちでピルを買って女に飲ませる男、という構図も嫌い。あくまでピルは、避妊目的でも他の目的でも、女性が自分を守るためのツールだと感じています。まあそんな感じで、これを見たお医者さん、マジでごめんね。おわり。
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追記としてfacebookのコメントに、2人の女友達から「私も飲んでます!」との声が寄せられて非常に嬉しかった。友人Aは、生理不順と貧血のために飲んでいるが、やはり彼氏がいても自分の体のことは自分でちゃんとしたい、とのこと。友人Bは、自分も10年近く飲んでいて語りたかった、生理日をコントロールすることでスケジュール調整が本当に楽になって手放せない、ただ副作用が心配、とのこと。2人もありがとう!ピル女子会するのが夢ッス、今東京で話題のバイブバーとかで(こういうのはふっ切れた企画にしてこそたぶんおもしろいはず…!)。
ふー。早く新しいピルが届いて私の生理痛が楽になりますように…!