日々、考える。日常。

物書きをしてゆきたいカワスミが、日々考えたことをストックするためのブログです。

いとおもしろき歌科の世界、の思い出

【のだめの聖地はもうすぐなくなる】

漫画「のだめカンタービレ」の舞台になったことでも有名な、武蔵野音大の江古田キャンパスでの学園祭がこの土日で終わってしまった。江古田キャンパスはこれから工事に入るため取り壊されるようだ。まさに「聖地」の見納めだったのである。…かく言う自分は、今回は足を運ばなかったのではあるが、やはり何か寂寞を感じた。

自分の大学時代にまさに流行していた「のだめ」である。「これ絶対武蔵野だって! 門が武蔵野じゃん!」などと興奮しながら読んでいた。自分はオーボエという楽器を専攻していたので、オーボエ奏者の黒木君が登場したシーンでは研究室が大盛り上がりであった。

【オペラのフラッシュモブ動画を紹介した】

今回、知人のオペラ奏者が出演しているフラッシュモブ動画の紹介記事を書かせていただいた。

横浜のレストランで突然、オペラのフラッシュモブ! 観客たちの反応は…? | 話題の動画

オモシロ動画を漁るのも結構ネタが尽きてくる瞬間があるので、ある。サボりつつfacebookを巡っているうちに「あ、これ絶対イケる! これ絶対イケる!」と思い、書くことにした。ネタリストの中から採用されたとき、とても嬉しかった。

なぜかというと「クラシックネタは結構ウケるので伸びしろがあるんじゃないか」とニタリニタリとインターネットの空気を掴んできたのだが、イマイチ「これは出したい!」という日本の動画に行き当たることが少ない。これは、私の「キュレーター」としての嗅覚不足もあるに違いないが(あー、あんまり「キュレーター」は名乗りたくないなー、ライターでいたいですライターで……)、まあなんとなく、特に演奏家側が思いついたことをすぐ動画にしづらい土壌もある。詳しく説明をはじめるとほんとうにキリがない話なのだが……それから「音大生の発表会での本気の演奏がこんなに上手だった!」だけでは私の中でもなかなか提案できないのだ。

あくまでも携帯会社が提供するコンテンツなので、「他のアプリを全部ストップして、スマホのブラウザでそれを全部数分間見るかどうか」要するに「途中でパズドラやりたくならないかどうか」を勝手に基準にしている。私だったらパズドラやるぞと。パズドラ、今やってないけども。

しかしながら、私のしていることは、引っぱってきてチョチョイと説明を入れるだけのお仕事なので、ホントにエラいのはパフォーマンスしている方々であり、動画を作っている方々なのである。それをいつも肝に銘じていないといけない。

えーっと何を言いたかったんだっけ、オペラ動画紹介したら、結構ウケて嬉しかったんですよね! ホントに自分が紹介したいものを紹介したときにウケて「これいいじゃん!」ってなるのが、やってて一番嬉しいのです。みんないいことづくめですもんね。

【「歌科の人たち」の愛すべきところ】

いわゆる「声楽科」出身の方々を、声楽科の方々自身も他の科も「ウタカ」と呼んで、ややこれは蔑称であるなと感じることもある。「ウタカまたバカやってるよ〜」(あっ友近みたいになっちゃった)みたいな感じだ。要するにきらびやかで、ナルシズム溢れる方が多いのである。もちろん、舞台に立つにあたってそれは必要な要素だから、徹底的にそのように教育されるようだ。……この感じについては、個人的にはこの本がとても面白かった。

47歳の音大生日記 (中公文庫)

逆に「管楽器専攻」の人々は「カン」と呼ばれ、「カンまた酒飲んでるよ〜」みたいな感じは、ある。

そのステレオタイプな感じは、前述の「のだめ」を読めばよくわかるかもしれない。「音大」は人種のるつぼなのである。だからといって「何々人だからこういう性格!」というのもまったくおかしな話であって、「ウタカなのに栗原類のようにシャイ」みたいな人がいるからこそ面白いのであった。

「ネタ企画にも本気で取り組む」ウタカの人々の習性を、私は何よりも愛している。普段オペラを演じて、顔をどんなコント師よりも白塗りにし、衣装を着て、バイト中も暗譜に取り組み、会期中は役になりきり、デブキャラのウタカの人々は深夜にデブメシを食らっていらっしゃる……このような日常を目の当たりにし、「あれ?私の友人の中で一番面白いのって、もしかして『ウタカ』の人々なのでは?」とある日突然、発見してしまったのである。当たり前であった、オペラは人類最古のコメディのひとつではないか。

【音大の話をするのはやや面倒だが、挨拶は大事である】

「音大出身だけどライターやってまーす!」という自己紹介をし出せば、確実に場が「ツカめる」のだが、実際のところ、話すのは正直相当メンドくさい……。

これまでの人生で、「好きで通っていた学校」を挙げるほうが困難なぐらい学校が好きではなかった。その割に売れない時代が長かったので、数えきれないほどの学校とのご縁はあるのだが。「音大生あるある」とかをやったらウケるのでは、などとご提案いただいたりするけれども、あまり筆が進んだことがない。まず、「あるある」とは誰もが「あるある〜」となるのが超大事なのであって、私の超大好きなレイザーラモンRGさんの「あるある」はツボを突きまくっているし、あそこまではなかなか到達できない。RG氏だって、あの極地まで容易に到達されたら困るであろう……彼のトークライブで彼のファンが集まると、本当に「あるある」のクオリティが高すぎるのだ。

しかしまあ、そんな畏れ多い空気を自分から作り出した中で「音大生あるある」をそこでひとつ述べさせていただくと、「意外に体育系」というのがある(あ、シーズン・イン・ザ・サンとかは歌わなくていいですよー)。今はどうなのかわからない、何かと厳しい世の中だし、色々とユルくなっているだろう。多分私の感覚は、現役世代とだいぶ離れている。ああ、この点も「あるある」をすすんでやりたくない理由のひとつである、なんだかんだ私いい年なので……!

当時、私の通っていた大学も工事前で、1階の広いロビーの真ん中には「いこい」と呼ばれる、ベンチと自販機を供えたスペースがあった。何が「いこい」なのかはわからないが、よくウタカの華やかな方々が憩っていた。カンの人たちは、飲み物を買いたいときに「あっ失礼シャーッス、サーセンサーセン……」という感じでさりげなく買ってくるような、少し違う宇宙空間であった。

ただ、新入生のときに「必ず挨拶!」という基本ルールを先輩から叩き込まれたおかげなのか、ウタカの方と必ず相部屋になる激安オンボロ物件である寮(これも、かなしいかな、今はもうない建物である……)に住んでいて知り合いが増えたおかげなのか、宗教音楽を研究するウタカの多いサークルに所属していたおかげなのか……カンの人とは思えないほど、実は知り合いが多かった。それはちょっと自慢していいことなのかな、と思う。

寮において、ウタカの驚くほどドレスを持っているお姉様たちと一緒に暮らして、一緒にリビングで「冬のソナタ」を毎日怠惰に見ていた生活を、今少し、懐かしく思い出す。暇さえあれば「モーツァルトはこの歌詞にこんなにエロい意味を込めていた」みたいな話をしていたのだけど、こんな話こそ一緒に住んでいないと知ることができない類のものだと思う。

おかげさまで、今もこうやって親しくさせていただいている他科の方が多くて、非常にありがたく思うのと同時に、「挨拶は大事だな」と、自己啓発本大好きなスパルタオッサンみたいでガラにもないことを改めて思うのであった。

補足で、最近思うんですけど私は結構初対面の方と喋るのにビビらないですね……フニャフニャしてるので、もしかしたら相手も喋りやすいみたいです。フニャフニャが嫌いな方には怒られるので、キチンとすべき場所ではキチンとしたいんですが、これを今後とも長所にしたいと思っています。

【この文は結局何を言いたかったのか】

「友達が多い川澄はエラいだろ!」みたいな感じになってきちゃいましたが、めっちゃ友達は少ないし、やっぱり初対面だと実はキョドったりしますし、書きまくったあとは喋るとドモりますし、立食パーティーとか隅っこでムシャムシャ食ってますし……全然社交的じゃないですね……。

えーと、要するに歌科の方々を含め、音楽家の方々は素晴らしく面白いことが多いので、これからも何かあったら書いていきたいなーって話です。それが、読者のみなさまの手元で「あっオペラだって! 見てみよー♪」ってなって、「あ、意外と楽しいじゃーん!」ってなって、「あっ今度この公演あるみたい! 行ってみようかな?」ってもしもなったら……こんなに幸せなことはないんじゃないかな、と思っているのです。

その上で、必ずクオリティをだいぶ大事にして拝見させていただいている。やっぱり良いものはPVを伸ばしたい、と思うのです。なので、ボツになってもボツになっても、自分が良いと思うものにアンテナを伸ばし続け、発掘し続けてゆきたいと思っています。それは、友達だから友達でないからに限った話では全然なくって。

もうひとつは、演奏家としてやってきた自分だからこそ、「評論家」「批評家」視点がチラチラ見えてしまう文章は絶対に書きたくないということです。それは笑点で喩えるならば、山田君の弟子あたりの人が「キクちゃんはバカだよなーマジで。今週のボケはイマイチだったわー」とか(もしもですよ、もしも)ネットに軽々しくも書いちゃうのとおんなじなので、書きたくないというか書けないんですね……キクちゃん元気になってよかったよね。もう少しオバハンになって貫録ついて「楽器の感触なんて忘れたわよ〜オホホ!」ってなったら何か、変わるかもしれませんけれども、この青臭い感じをすごく大事にしたいですね。いつも、絶えず見えない苦労をしている音楽家側にも立てるスタンスでいたいと思うのです。

こんな感じで、出させていただける媒体にも、読んでくださる方々にも、とても感謝しています。おしまい。