日々、考える。日常。

物書きをしてゆきたいカワスミが、日々考えたことをストックするためのブログです。

「女向けのTwitterにはわざと漢字を減らす」~選挙フォーラム2014で起きた女性蔑視発言について

 だいぶ遅くなりましたが、ここ最近もっとも書かねばと思っていたことなので、しっかり書きます。2014年7月22日(火)、平日の10時から20時半まで、JA共催ビルカンファレンスホールというところで開かれた「ネット選挙フォーラム2014」というイベントに参加してきました。事務局は「株式会社ジェイコス(勝つ!政治家.com)」さんという会社でした。ドットコム…。それは置いておくとして、この日付はネット選挙解禁から丸一年ということで設定されたようでした。登壇者の顔ぶれも豪華でした。

 

 イベントを知ったきっかけは、民主党に所属されている知人がfacebookで拡散していらしたからです。一日じゅう、基本無料で聞けるイベントだったのですが、有料プログラムが2コマあって、こちらはiPhoneからPeatixというアプリを使ってチケットを取った。便利ではありましたが、計4000円のチケット代、facebookでシェアすると3600円になる割引システムがあるので、それはシェアしますよね…という。ちなみに2コマ分買いましたが、どちらの電子チケットにも事務局の方から「今回はどうぞよろしくお願いいたします。」という旨のまるまる「コピペde挨拶!」なメッセージが来て、私そういうのへの返信はマメにすることを一応モットーにしているので、どちらにも「とても楽しみにしております、どうぞよろしくお願いいたします。」みたいな感じでまあ返したけど、なんかPeatixって2枚ダブって買う顧客のことまったく見えないシステムなのかな…そのへんもまあ対応として非常にビックリしてはいました。

 

 で、フタを開けると朝からずっとニコ生で中継していて、最終的には数万人という人たちが見ていたらしい。それはいいことだと思う。…けど、普通有料プログラムを客に無断で中継するのはどうなのかな。そこが企業として非常に疑問に思う。なんか、ニコ生するならわざわざ永田町まで行かなくても家で見てればよくね?ってなっちゃうし(私は喋ってる人を生で見たいから行くけれども)、なんかそこらへんの考え方が個人的にはさっぱり理解できません。

 

 …ここまでは、前置きです。本題に入ります。問題になったのは、15:40~16:50の無料プログラム「有権者を引き込むネット選挙とは?~ネットでバズるコンテンツと空気感~」。登壇者は、「連続起業家(原文ママ)」家入一真氏、音喜多俊氏 東京都議会議員、他登壇者交渉中、とありまして結局3人目は株式会社ジェイコスの高畑卓氏でした。モデレーターは選挙プランナーの松田馨氏。

 

 家入氏は都知事選での活躍も記憶に新しく、インターネッ党などについて賛否が分かれるところも大きいですが、それなりにやはり「ネットの人」として非常にネットを隅々までわかっていらっしゃると考えているので、楽しみに聞きに行ったプログラムでした。

 

 けれども家入氏は終始、少々挙動不審に見えました。ニコ生では登壇後すぐに「統合失調症」との酷いテロップもあったのを明確に覚えています(私はこの症例に関する方々への差別意識があるわけではありませんが、事実としてあえて書きます)。恐らくユニークな一面がある方でもあり、その日のTwitterでお見受けできたように少々元気がなかったのだろうけれども(あ、最後はちゃんと個人的にご挨拶させていただきました、素敵な方だと感じました)、やはり引き出し方によって魅力のある話というのは聞ける方なのです。ずっと黙っているのにボソッと、核心をついたことを言う。こういう方の場合は、もうちょっと司会者が沈黙を待って話を振らないと面白く話が掘れていかない。日曜のテレビだったら、ずっとダジャレを言いまくりたいキクちゃんばっかり指してて、腹黒円楽の風刺キメてきた回答への挙手を全部スルーする歌丸師匠みたいなもんです。まあ笑点大喜利にはちゃんと作家がついててあの素晴らしいクオリティなのはみなさんご存知のことですが、この顔ぶれで、だいたいここまで話そうという台本的なものがあったのか…恐らくあまりそういう地図的なものはなくて、もうその場で喋っちゃえ!アドリブで行っちゃえ!みたいなのがあったのではないかと。非常にツルツルと滑るトークセッションだなと感じました。その点、次のワクの津田大介氏と荻上チキ氏の話は、有料でもあるしちゃんと聞いたもんはしっかり持って帰らせよう!という気概を感じさせていただけるものだった。

 

 私は特に家入氏のファンではないしそこまで思い入れは実はない。けれども今回都知事選において果たした役割はそれなりに大きく評価すべきものだと個人的には感じています。彼の使った「ぼくらの~」的な手法を、ずばりTwitterハッシュタグ「ぼくらの中野」を作ることで、6月の中野区長選で個人的にリスペクトの念を持って取り入れさせていただきました。これを作った時点では現職区長に反対する二つの陣営で「それ、いいですね!やりましょう!」というようなやり取りがあり、有意義だったように感じています。このハッシュタグで一番に気をつけたことは、「誰を支持する!」と有権者があえて書かない中立性で、それが全ての方に守っていただけてとてもよかった。私にはWeb制作のスキルが足らないのでTwitterで盛り上げる程度のことしかできませんでしたが…「ぼくらの」という言葉には賛否両論またあることも承知していましたが、選挙の論戦だけでは拾えない意見を拾うことができました。一本化できなかったと批判されがちな区長選においてTwitterではある意味少しだけ役割を果たせたと考えています。しかもちゃんとTwitter上で家入氏は「ぼくらの中野」の存在を「お気に入りに入れる」という形で拾ってくださっていたので、少しだけお墨付きの感じで活動できて、とても感謝しています。…で、家入氏、インターネット上にはとても根強いファンをお持ちの方ではあるんですが、私はそこまでめちゃくちゃファンなわけでも、ない。ここまで書いてたらファンか。まあどっちでもいいです。いずれにせよ、家入氏ここまで出てきて、しかも「炎上のプロ」みたいな題名付けられてこの仕事ふられてきて、まあこの扱いはちょっと酷いんじゃないかな…と思いました。全体的に音喜多氏が喜んではしゃいだ感じでたくさん明るく喋りまくる、自分のネットにおける戦法をぶっちゃけアピールする、それを高畑氏がノッて盛り上げる、というような空気でした。

 

 問題の箇所を、今、一週間が経ちましたができる限り文字起こしします。敬称略。

 

(前略)

高畑:今回の都知事選で一番リツイート数が多かったのが、家入さんの、ホームレスに事務所を開設するという呼びかけだった。他の陣営は全部発信のみだった。

松田:(大雪の影響で)「凍死者が出るかも?」という局面で「事務所を開放します!」というのは2500RTされ、一番バズった。それがどのぐらい投票行動に影響したのかは別だが…。面白いことや怒りや、良いことというのは人はシェアしやすい。

高畑:家入さんはそれを作戦でやったわけではないが、事象が面白かった。ネガティブなことは伝播力が大きい。日本人はTwitterも匿名だし、ツッコむほうがやりやすい。賞賛や肯定をするのは難しい。Facebookは実名だからそちらのほうが多いが。

音喜多:怒り(の伝播について)は、狙ってやるが、政治家がやらなきゃいけないことはあくまでも欠陥を改善できる点を挙げること。怒りばかりの有権者にアプローチをし、改善策を提案することが、ネットにおける政治家の役割だと思う。情報公開が大事、例えばオカネの話は(有権者に)見えない。

松田:選挙期間中何しているか情報公開というのも、コンテンツとしてはあまり面白くない。だが、家入さんは最初から都選管の話なんかを(Twitterで)「ダダもれ」させていた。

家入:意外に紙3枚ぐらいで立候補できる。「意外に出れちゃう」というのは面白いし、知ってほしい。僕はツイキャスだけずっとやろうと思っていた。政治のことはわかんないけど、ひとつひとつ勉強する(自分の)さまを、みんなと共有したかった。

松田:20~30代の人たちは、選挙カーはうるさいし、政治家って悪い人ばかりって思っている。

家入:(都知事選で)対談をして、「あー、人間なんだなあー」と思った。「政治家=悪人」のイメージだったけど、意外と悪人はいない。

松田:オカネ持ってる人もそんなにいない。(笑)

家入:バズらせたい側とバズらせられる側がある。ノッてくれる人たちがいるからバズれる。…(少し考えて)バズらせる人と、のっかる人。バズらせる人はのっかる人側でも、ある。(筆者注:非常に哲学的な切り込み方と語り口。ここをもっと掘ってほしかったとも思います。今、多くの人がメディアにおいて考えていることでしょうから)

 

音喜多:Twitterにはインフルエンサーになる方がある程度いて。自分は「この人にリツイートしてほしい!」という記事は、その人を狙って時間帯を考えてブログを書いたりしているんです(笑)。

高畑:すごい感覚的にそれをやってますよね。

松田:アメリカでは(特にオバマ以降有権者に)カスタマイズしたメッセージを送っている。日本ではネット上でも(選挙カーのように)騒音だらけ。

高畑:一日何回も投稿すると(有権者は)離れていく。どのタイミングでどの投稿をするかが大切。テクニカルな話をするとですね、TwitterでもFacebookでもインサイトが見られるわけです。フォロワーが何歳ぐらいで、何時頃見てるか。ここで言葉遣いがポイントになります。例えば、女性のフォロワーが多かったら漢字を減らす、とかの工夫をするわけです(笑)。家入さんの「ぼくらの」って言葉はセンスがあるなと思います。

音喜多:僕は「絶対バズらない投稿」はしないですね。

松田:何回も連投すると、活動している雰囲気が出て、一生懸命活動しているみたいで(一見)いいですけど。

音喜多:例えば僕はニュースの引用っていうのを積極的にしていて、ニュースに一言(筆者注:恐らく非公式RTで)コメントつけてつぶやく。地域情報を引っぱってくるんです。例えば、世田谷ニュースとか。引用をして、「戸締まり用心!」とか書いちゃう。

松田:発信しなきゃいけないマインドで発信してる政治家って少ないのかなと思いますね。

音喜多:党で、身内をほめる発言はバズらないし、悪い影響しかないです。マイナスになりますね、ネットで。

 

家入:ネットは対話だと思っている。普段声聞けない人の声が聞ける。みんな「声を上げてもいいんだ」と思う。「選挙行ってもいいかな」って思う。「これについてみなさんどう思いますか?ご意見ください」と書けばいい。リプライが来てリツイートされる。地域外や県外でも関係なく、声を上げたくなる。リアルとネットを分けない。

音喜多:ネットは新しい場所、新しい事務所だと思う。

高畑:SNSのアドバイスとして、年配の方はできるだけ本人にやらせるようにしている。僕が代わりにやっちゃうと(筆者注:選挙コンサルとして)違法になっちゃいますから(笑)。毎日Twitterする努力が必要、一日15分だけでいいんです。スマホにはり付くのは政治家の仕事じゃないから。難しければ、文字起こししてくれる人、自分の考えを書いてくれる人を見つければよい。

音喜多:(政治家のTwitterは現状)自分の写真や、「更新しなきゃ」という(街宣告知などの)二大コンテンツばかりで(読者に)リーチしていない。僕が若手の政治家志望のコにアドバイスするのは、リプライを全部に返すなと。政策に生かすことが対話になる。もしかしたら誤解してるコがいるのかなー?なんて。ネットが怖くてやめちゃう中堅の議員さんもいる。

松田:ネット解禁で恐怖を覚えるのか、それとも(果敢にアタックしていける)無名の新人か、人間は見ちゃう。

音喜多:(ネットをやっていて)そんなに悪い人ばかりではないんですよね。

松田:無視する力、スルー力が必要。

家入:僕は(Twitterの)ブロックはしないけれど、スルーはバランス感覚。人格否定から議論まで多種多様なリプライが来る。何をスルーするか、感情を排してどう返すか。「バカ!」「クソ!」と罵っちゃうと大変だから。プロレスは、見る人がいるから盛り上がるのであって、(その炎上を)意図的にやってる人はいて、そのスキルがある人はいる。(何も考えずに炎上させると)焼け野原しか残らない。

 

(中略・終わり方は一番下に書きます)

 

 …というような話でした。セッション中から「これは問題だ!」と感じ高畑氏の発言をツイートしたところ、新聞社の記者の方のアカウントをはじめ、数名の方からのリツイートやリプライなど私に反応があった。このコマの終了後、(時間的に押しているのは雰囲気でわかりましたので、できるだけ邪魔しないタイミングで)すぐさま挙手して、壇上の方々に「女性蔑視の発言に訂正を求めます」と訴えたところ、高畑氏は私をなでつけるような手の動作をして「時間がないので、あとで個人的に話しましょう」と言いました。「私のTwitterで炎上少し、していますよ、今弁明しなくて大丈夫ですか?」と早口で尋ねても、無言で押さえつけられました。参加者には女性も多かったし、何よりニコ生の視聴者も多かった。皆の前で舞台上で説明することが筋だと考えます。

 

 この時点でさらに追及すべきでしたが、そのような状況でしたし、次のコマに準備されていた津田氏と荻上氏の話を楽しみにして来ていたので、その時点では高畑氏とお話しする時間はありませんでした。直後、Twitterで謝罪を求めたところ、津田氏たちのセッション中に私個人へリプライで謝罪が来たため、「そういう問題ではありません」と返しました。当然のことです。これによって津田氏の話にうまく集中できなかった。私は女性差別は人権問題だと考えるため、全ての女性に説明が必要だからです。

 

 家入氏は、私が非常に残念に感じている旨のツイートを、わざわざお気に入りにしてくださったので、すぐに家入氏に終わった後会いに行きご挨拶させていただきました。もちろん「一緒だと思われたくない」というのはあるのかもしれませんし、恐らく私が家入氏の手法を取り入れさせていただいたことも覚えてくださっていたのかもしれません。

 

 すぐさま思ったのですが、恐らくこのシーンで最も「一緒だと思われたくない」のは音喜多氏だと私は考えます。なぜ、セクハラヤジ事件、あれだけバズらせて、マスメディアに追わせて(という経緯をご本人も壇上で話されていました)、その姿勢を持ってして高畑氏の発言を笑顔でスルーできるのでしょうか。何より問題は、セクハラヤジ事件は安倍政権に批判や不安が上がる中、あえて言うと、非常に「バズりやすかった」。個人的には、ショックを受けて数日間寝込みました。その割にみんなの党としてはヤジを発した議員を辞職まで追いつめる姿勢が足らないと感じています。結局、都民また国民ぜんたい(特に女性)を怒らせて、大問題にして炎上させて何がしたかったのか。ただ「バズらせたい」だけの安直な姿勢が透けて見えるのではないでしょうか。

 

 また、この件があった後、荻上チキ氏が壇上でノートパソコンを見ながら「差別意識があるとポロッと口に出してしまう」というようなことを発言されていたのを私は覚えています。追ってくださっていたとしたら非常にありがたいことだなと思いますし、なかなかそのようなタイムリーな話題が出る場面でもありませんでした。

 

 「ネット炎上」をテーマにしたセミナーで「炎上」してしまう。それも、主催者であり、「選挙コンサル」や「政治家のTwitterへのアドバイス」をやっているよ、と話している方が。勝つ!政治家ドットコムですし。ちなみに高畑氏のTwitterはこの日、フォロー数が50程度、フォロワー数が30程度でしたが、フォローしているのは誰もが知っている有名人(孫氏など)をのぞけば、地方議員のようでした。これは、彼がコンサルしている相手であると誰でも邪推が可能です。私はそこまで見ますし、大多数のネット民は炎上すればもちろんそれを見ます。コンサルとして、そういうワキの甘さがある方が炎上すると、何が起こるでしょうか。客先のコンサルされている政治家への有権者の不信感、クレームです。私個人としては、それはコンサル業としてはあってはならないことだと強く考えます。また、勝つ!政治家ドットコムのTwitterアカウントのフォロワー数はこの日約900ぐらいでした。

 

 津田氏たちの話が終わったあと、ロビーで高畑氏に個人的に呼び止められ、「申し訳ありませんでした」を繰り返し発していただきました。しかしながら、この発言が会としての公式なものだとされるのは非常にまずいことだと考えます。テレビでも、生中継で不適切な発言があった場合、CM明けに必ずアナウンサーが喋りますよね。それは、会場を押さえていて時間が押しているから…という問題ではないと考えます。高畑氏自身が、後のセッションの方々が舞台からハケる間に20秒登壇し、マイクで一言添えればよいことです。なぜ、Twitterだけの説明で適切だと考えているのか。当初は「会としても公式サイトで必ず説明をします」と私におっしゃっていましたが、結局彼個人のTwitterで謝罪が行われただけです。非常に残念に思います。

 

 この後、非常に会として、またイベントとしての姿勢が気になったため、最後まで残りました。最後の挨拶は最後のセッションで登壇した方がアドリブ的にふられている様子でした。ここで高畑氏は登れたはずなのになぜやらないのか。私がカスタマーサポートする立場だったら絶対に絶対にやります。今話題のベネッセをはじめ、各企業はカスタマーサポートという面で非常に尽力している。もっと言えばネット選挙ですらそうです。対話が大切、また「傾聴」が大切、と繰り返し繰り返し述べられたイベントでした。傾聴、確かに大切ですが、コーチングの方法論としての「傾聴」はもはや使い古されたワードに聞こえました。うわべだけの傾聴や謝罪は最も不必要なものです。女子トイレと出演者控室が近いところにあったのですが、トイレに行った後控室を通ると、ドアが半開きになっていて、高畑氏が朗らかに大きな笑い声を上げていました。その、笑い声の先に誰がいたのか。

 

 自分なら(自分は元々舞台の人間であるという意識があるから、ですが)、お客様にそういうところは絶対に家に帰るまで見せません。問題が起きた後ですから、なおさら会場内では注意します。それはインシデント的なものの基本だとも思うのです。

 

 また、結局はこんなやりとりも最後のほうにありましたので紹介します。

 

(中略)

高畑:Twitterリテラシーが必要なんですよね。TwitterFacebook両方やってほしい。マストなのはホームページですね!ユーザーは、(選挙のとき)プロフィールをよく見るんですよ。ホームページをちゃんと作って、プロフィールをちゃんと書け!って話ですね。

家入:…(少し考えた後、苦笑しながら)「ホームページを持つべき!」ですか…ネットの僕らの感覚だと、10年前の話って感じがしますけどね…。(中略)ネットが全てはないが、ネットを使うことで戦える。力がないうちは、使えるもの全て使って戦わないと。バズるとか炎上とか、怒りやネガティブな力をベースに、(人々を)バズらせて、その先に待ってるものは何か?それで当選しても、怒りが蔓延した社会になってしまう。人を叩いたり足を引っぱったり感って大きい。「バズらせる」だけの発想のみでは、本質を見誤ってしまう。そもそもなんで政治家になりたいのか?が大事。

松田:ネットがあることで、しんどいことをしなくても選挙できちゃうのでは?っていうのは違うんですよね。

 

(これでセッション終わり。終わったあとすぐに家入氏から私のTwitterにお気に入りの星を付けていただいたことが印象的だったので、ノートにすぐに書きました)

 

 …このくだりで、何がツッコミどころかっていうと、「ホームページは10年前の感覚」、その通り、よく言ってくれたよ家入さん!…なんですよねー。私がこれ、左翼系の選挙集会だったら「そうだ!」と嬉々として言っちゃうところですし、私がネトウヨだったら「正論キター!!!」って書き込むところですし。geocitiesとか使って「ほむぱげ」とか手打ちでhtml打ってた時代なんでしょうか…ホームページビルダーでしょうか…カウンター付けてキリ番おめでとう!とかやってMIDI流しちゃうんでしょうか…。なんか、「ホームページ」って言うこととか自体もなんかWeb2.0もだいぶ過ぎましたし、「あーウェブサイトって言わないんだ、あー、全然クールじゃないな」とも思う。

 

 駆け出しの物書きとして常に考えることは、人をナメた発言を公の場所でしちゃダメだということ。例えば「この企画で女性を一本釣りする!」と考えてても、ターゲットは20代女性!と考えた企画書でも、そこでターゲットをナメたことを書くと、絶対に文面に出ちゃいます。これは、わずかな役割ながら選挙コンサルとしても常日頃考えていることです。高畑氏の謝罪の言葉では「せっかく楽しみに来てくれたのに残念な思いをさせてしまった」ということでした。しかし、私は遠足に行ったのではありません、遊びに行ったのではありません、ディズニーランドに蓮舫さんや津田さん見に行ってキャーキャーしたかったんじゃないんです。勉強しに行って持ち帰りに行ってるんです。咀嚼するんです、得たことを。

 

 なんとなく…ただの津田さんを見たくて会場に来ちゃった女の子的なニュアンスで扱ってくださった、という印象を受けていますが(特に自慢したくて書くわけではないですが、津田さんをお手本に髪を染めたりしているところはある…って書いちゃうとすごく痛いけれども、津田さんのジャーナリズムにはTwitterの日本上陸当初から非常に影響を私は受けています。非常に尊敬していることは本当に事実なのです。…あ、これ津田さんの話じゃなかった、要するに私が若く見られがち、女であることに加えてナメられがちな外見、という説明です)、そのような態度でナメてかかる顧客が、実はネット選挙において大きな仕事を果たしているかもしれない、もしくは今後するかもしれない…という視点がまったく感じられませんでした。そういう発想があったらもっと違う対応になったのかな、と思います。

 

 Facebookでもすぐに速報として事態を説明しました。その場にいて、事の顛末を見守ってくださった方からも「いいね!」が付いたりしていて、なんだかんだで理解していただけた方はいるし、あそこで挙手をした勇気は自分自身認めてあげたいという気持ちがある。しかし、こういう一対一の謝罪の仕方は、まるでセクハラヤジ事件と一緒です。塩村議員、さぞかし気持ち悪かったことでしょう。モジモジする会見だったことでしょう。そうでなければ(もはや塩村氏自身がどう感じたかはあまりわからないところもありますが、世界的に報道されて、あらゆる議会でのあらゆる党派の女性議員がセクハラを受けたことが明らかになっているこの局面で)、みんなの党の「炎上戦略」に国民全体がのせられている、我々は操られているんだ、と強く感じさせられた一日でした。

 

 もちろん私のこの報告全体を客観的に読んでも、高畑氏個人の失言に過ぎない、というご意見が大半かと思います。しかし私が差別意識を常日頃から感じ、ほんとうに「炎上」に気をつけているならば、壇上で何らかのアクションをするでしょう、私ならば。ポロリとでもこぼしてしまうということは、単に言葉のあやにすぎなくても、普段からそのようなお考えをお持ちということです。「炎上に気をつけよう!」に近いタイトルのセッションで炎上していてどうするのでしょうか。ミイラ取りがミイラとはうまくいったものです。女性に対する表現としては、もちろんコンビニでananと週刊現代を例えば比べたときにまったく見出しの付け方は違う、ネットニュースなども当然のことながらターゲットをきめ細かく考えて作り込まれPVが量産され続けています。また、人に対してわかりやすい言葉を使うということに関しては私も井上ひさし花森安治の言葉をいつも胸に刻みながら生きています。しかしながら、言っちゃダメなことは、絶対に言っちゃダメなのです。私はこの点をずっと崩さずに、生きて戦い続けようと思います。人に対して真摯な立場であり続けたいと思うのです。

 

 選挙や政治は、何の党派や会派であっても、誠実さや誠意が有権者に伝わらないといけない。それは、候補者・政治家などの担ぎ上げられる人だけではなく、ブレーンとして事務所の中からサポートする人の誠実さも重要なのです。もっと言えば、色々な場面ですぐに対立候補から揚げ足をとられることがしばしばあることから、支持者・支援者にもリテラシーが必要とされる時代になってきました。ここ数年は特に、Twitterを選挙に大きく用いる時代なので。ですから私はこのことをよく鑑み、物書きとしても修行を積みながら、必要とされたときにわかりやすくものを伝えられる人でありたい。良い選挙コンサルになりたい、いや、コンサルという言葉はそもそもどうなのかというのもあるのですが…(松田氏は「選挙プランナー」と使っているので「プランナー」のほうが嫌味がなくてよいのかもしれませんね)女性の選挙コンサルというのはきっと必要だと思ったのでした。助けが必要だよ、というところですぐに駆けつけて動ける人になりたい、と。「炎上」や「バズる」なんて言葉だけでは言い表せないように、人の心を動かせる人になりたい、と。

 

 この件、この怒り、このもめ事は、私個人のものであって、何かの党派や会派の考えに準じるわけではないことを最後に明記して、ご報告を終わります。また、もうひとつ。私は中野区長選が盛り上がらなかったのは家入氏ひとりの責任だとはまったく考えません。色々選挙期間中彼なりに動いていたことが伺えるし、そもそも投票率や民意というものは誰かひとりに責任を押しつけるべきものではありません。読んでくださってありがとうございました。

 

追記します(7/29):

 家入氏の「ぼくらの」の多用は、実は選挙後特にインターネットで何かと批判を受けることが多いワードでした。特にインターネッ党の立ち上げ前後にその声が多かったように感じています。なぜなら、ひとつめに、「ぼく」を使うことで男性を表し、女性やLGBTの方々の政治参加を無視するのではないか、というイメージをパッと与えてしまう。ふたつめに、家入氏の言う「ぼくら」というのがいったいどこにあるのか、誰を指すものなのか、選挙期間中もインターネッ党のサイトからも、いまいち見えにくかった部分は否めません。

 私個人としては「ぼくらの」は言葉のセンスがあると思っています。特に若者が主体的に政治を考えていけるキャッチコピーであり、非常に優秀なのではないかと感じていました。それとともに、やはりジェンダーに関しての意識は家入氏はいかがなのか、と感じてはいた。しかしそれを補うような政策は出されていたように記憶しています。

 以上を考慮した場合、問題箇所である発言、「女性には漢字を少なめに」の直後に「家入さんの『ぼくらの』はセンスがいい」と話をつなげる高畑氏の情報感覚というものは、もしかするとけっして鋭いとは言いがたいものなのではないか。どれだけネットで「バズった」ものをキャッチされているのか、私は不思議に思います。「選挙フォーラム」というイベント自体が非常にいかがなものか、と思えてくるのです。